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特別展「花の宮廷画家ルドゥーテ」
展覧会概要
現在のベルギー南東部ワロン地方にて代々画家を家業とする家に生まれたピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ(1759~1840)は、ルイ 16 世王妃マリー・アントワネットの博物蒐集室付素描画家として、そしてフランス革命後はナポレオン 1 世皇妃ジョゼフィーヌに仕えた宮廷画家として自然史博物館付植物画家・図画講師を歴任しました。ルドゥーテは植物画家として名高く、その高い技量から「花のラファエロ」「バラのレンブラント」とも称されています。
このたびはルドゥーテの集大成といえる植物図譜『美花選(Choix des plus belles fleurs)』(1827-33年刊)の全144点と、貴重な肉筆画3点、そして彼の代表作『バラ図譜(Les Roses)』(1817-24年刊)より厳選された15点の160点余りにより、ルドゥーテの美しい植物画の世界へといざないます。
展覧会名 |
花の宮廷画家ルドゥーテ |
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会期 | 2025 年5月31日(土曜日)~7月21日(月曜日・祝日) |
開館時間 | 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
休館日 | 月曜日(祝日の7月21日は開館) |
会場 | 下関市立美術館 展示室1~3 |
観覧料 |
一般1,000円(900円)、大学生800円(720円) ※( )内は平日料金。18歳以下の方、高等学校、中等教育学校、特別支援学校に在学の生徒は、観覧料が免除されます。下関市内に居住する65歳以上の方は半額が免除されます。 ※前売り券はございません。 |
主催 | 下関市立美術館 読売新聞社 KRY山口放送 |
特別協力 | コノサーズ・コレクション東京 |
企画協力 | 青幻舎プロモーション |
協賛 | やまぐち文化プログラム(山口県総合芸術文化祭2025) |
展覧会のみどころ
(1)集大成『美花選』の全144点を一挙展示
『美花選』は、すでに『バラ図譜』などを手掛けたことで名声を得ていたルドゥーテが、67 歳のときから数年をかけて出版した、彼の集大成といえる植物図譜です。全 144 点すべての原画をルドゥーテが手掛けており、鮮やかな色彩ながら花弁のやわらかさなどの質感をも感じさせる作品群となっています。ルドゥーテは、原画制作のみならずスティップル・エングレーヴィング(点刻彫版法)という銅版の技法を開発し、線でなく点によって製版することを考案しました。点の集積で表現された花々の輪郭線などは、微妙なグラデーションなどを可能にし、優美でやわらかな表現がみられます。一図一図、職人による手彩色により美しく仕上げられています。
『美花選』より《チューリップ》1827-33 年、コノサーズ・コレクション東京蔵
(2)バラの画家ルドゥーテのバラ作品 15 点を展示
皇妃ジョゼフィーヌは無類のバラ好きで、多くのめずらしい品種を集めていました。それらの図譜を手掛けたのがルドゥーテでした。8 年の歳月をかけて制作されたこの『バラ図譜』は彼の代表作となり、ボタニカルアートの金字塔とも言われています。収められた 169 種のなかには既に現存しない品種も多く収められており、この図譜は美術的価値だけではなく植物学上も重要な資料となっております。この中からこのたびは選りすぐった 15 点を展示します。
『バラ図譜』より《ロサ・スルフレア》1817-24 年、コノサーズ・コレクション東京蔵
(3)ルドゥーテの肉筆画3点を展示
スティップル・エングレーヴィングに手彩色を加えた豪華本として『美花選』や『バラ図譜』が 刊行されていますが、このたびはそれらに合わせて貴重な肉筆画3点も展示します。発色をよくするため、表面がなめらかで絵具の吸い込み具合が少ないヴェラム(動物の皮から作られたシート状のもの)にグァッシュ(不透明水彩絵具)で描くなど、制作のこだわりがみられます。描き直しがきかない画材の取り合わせで、筆者の確かな画力が伝わってきます。描かれてから 200 年以上経てもなお、みずみずしく透明感のある花の色をじかにご覧ください。
肉筆画《赤のラナンキュラス、紫と黄色のパンジーの花束》1821年、コノサーズ・コレクション東京蔵