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特別展「ビアズリーの系譜 アールヌーヴォー、日本の近代画家たち」
19世紀末美術に特異な位置を占める画家オーブリー・ビアズリーに注目し、代表作『サロメ』を中心に、耽美的な魅力を紹介します。また、アールヌーヴォーなど同時代の美術と、西洋美術の受容期にあった日本の画家たちの作品・資料から、近代美術史のもう一つの側面を読み解きます。
展覧会名 | ビアズリーの系譜 アール・ヌーヴォー、日本の近代画家たち |
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会期 | 2022年11月19日(土曜日)~2023年1月29日(日曜日) |
開館時間 | 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
休館日 | 月曜日(祝日の1月9日は開館)、年末年始(12月27日~1月3日) |
会場 | 下関市立美術館 |
観覧料 | 一般1,000円(800円)/大学生800円(640円) ※()内は、20名以上の団体料金。 18歳以下の方、高等学校、中等教育学校、特別支援学校に在学の生徒は、観覧料が免除されます。下関市内に居住する65歳以上の方は半額が免除されます。(いずれも公的証明書の提示が必要です) 観覧料減免の詳細については、こちらをご覧ください。 |
主催 | 下関市立美術館 読売新聞社 KRY山口放送 |
協力 | 島田安彦コレクションアーカイブ |
<外部リンク>
本展は、宝くじの社会貢献広報事業として宝くじの受託事業収入を財源として実施しているコミュニティ助成事業により、宝くじの助成金で実施するものです。
展覧会について
第1章 ビアズリーとその周辺
弱冠22歳のビアズリーが挿絵を手掛けた、オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』。官能性と死のテーマが織りなすイメージは、テキストと等価な絵画世界が展開する画期的なもので、発表されるや大評判となりました。ビアズリーが美術主任を務めた文芸美術雑誌『イエロー・ブック』は、都会的で挑発的なイメージで、大衆的人気を獲得しました。彼の過激でセンセーショナルな作風は、熱狂的な支持と同時に、強い批判も巻き起こしました。あふれる才能に洗練を加えつつあった1898年、ビアズリーは結核の悪化により、わずか25歳で夭逝します。彼の短くも鮮烈な創作活動を、『サロメ』全17葉を軸に、雑誌や書籍資料により紹介します。
また、ジャポニスムを牽引した浮世絵版画や、ビアズリーの才能をいち早く認めたラファエル前派の画家バーン=ジョーンズの装丁本、当時の挿絵入り絵本の数々など、ビクトリア朝時代の美術の様相も紹介します。
オーブリー・ビアズリー『サロメ』挿絵より《ダンサーへの報酬》、《クライマックス》 いずれも1894年 熊本県立美術館蔵
第2章 アールヌーヴォーへの波及
曲線を多用した装飾的な様式で、ビアズリーとアールヌーヴォーの表現は軌を一にします。ミュシャに代表される優美な女性像と装飾性を融合させたアールヌーヴォー様式は、新しいメディアであるポスターを通して大いに普及しました。ビアズリーに早くから関心を寄せていたトゥールーズ=ロートレック、アメリカのブラッドリーのポスターなども展示し、19~20世紀美術の、華やかさの背後に潜む神秘性や象徴性を紹介します。
世紀末芸術が好んだ女性像に「ファム・ファタール(運命の女)」があります。男性を破滅させる魔性の女のイメージで、サロメはまさにその典型と言えます。一方で現実の社会では、仕事を持ち、同伴者なしに出歩く「進歩的な」女性たちが登場しました。例えばビアズリーが『イエロー・ブック』で描いたパーティーに興じる女たちなどは、この「新しい女」の典型に見えます。このような女性をめぐる多義的なイメージを投影した作品を展示します。
- アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《ディヴァン・ジャポネ》 1892年、アルフォンス・ミュシャ《ジョブ》1898年
第3章 日本の画家たち
西洋美術の受容期に、日本の美術家たちがビアズリーをはじめとする世紀末美術から受けたインパクトも見逃せません。藤島武二、橋口五葉らのアール・ヌーヴォー様式、竹久夢二の抒情的で洗練された創作を紹介し、さらに文芸・美術雑誌『明星』や『方寸』、『白樺』、『月映』にかかわる画家たちの作品・資料から、日本の近代美術がビアズリーから受け継いだものに迫ります。
鳳(与謝野)晶子(装丁:藤島武二)『みだれ髪』 1901年 かごしま近代文学館蔵、橋口五葉《此美人》1911年 鹿児島市立美術館蔵、藤森静雄《亡びゆく肉》(『月映』4所収) 1915年 福岡市美術館蔵
※所蔵表記のないものはすべて下関市立美術館蔵